私の治療所から歩いて3分のごくごく近所に日本の文化を普及する為のアカデミーがあります。もちろん日本人が先頭切ってやってるわけです。大将は、日本の大御所池坊を普及している矢野里花子先生です。お花を中心に日本語、折り紙あらゆる日本の文化をスペイン人に伝えるアカデミーです。お花をやるスペイン人はもちろん日本のことに興味があります。マイナーな文化ですが、はまると日本すきすきの頼もしい日本シンパになります。まさに根っこのところでの日本文化普及の立役者です。
日本の役所、また日本文化財団などは尺八おじさんを呼んだり、猿股一丁の太鼓デンデンおじさんをわざわざ日本から呼んで、劇場を借りてバンバンやってますが、私に言わせれば、夏の花火です。年一回の花火です。日本の文化の普及と言っても訳のわからない着物を来て踊って良かったよかったは、所詮3年で帰る役人の発想です。帰国までに溜まるであろう貯金の残高を計算して倹約に励む、哀れ駐在員夫婦の発想です。金を出して連れて来れば、上司に君よくやったねと、身内同士の慰め合い。
じゃー本当の文化の普及はなんですか。それは地道に土着の日本人がコツコツと金にもならずに好きで活動しているものを指します。10年、20年お花をスペイン人に教えていれば、根っこができてきます。無い道が出来上がっていきます。
例えばマドリッドの郊外でお豆腐を製造して食の文化を広めている鳥取県民。何十年も空手を教えて日本人の心とは何かを体を張って普及している空手10段の大先生。あえて言わせてもらえば30年もスペイン人の腰痛を治してきたMR SHIATSUだって大したもんだぜ。この辺が日本からスペイン語もそこそこのおじさん、おばさんが来て、考える発想の根本的相違です。
お花の師匠矢野先生が、肺がんとの戦いに挑んだのが1年半前からだそうです。スタッフの心配をよそに池坊の普及に拍車が掛かったそうです。土曜、日曜も返上していつもアカデミーで仕事をしていたのを覚えています。今年の春に開催された池坊のBIG イヴェントに賭けていたんだと今合点がいきます。何十人もの池坊の先生たちがお見えになりました。NO1の大先生もお見えになりました。周りのスタッフが私に、このイヴェントに最後の炎を燃やしてんのよ。と嘆いていたのを覚えています。そのたびにアカデミーにお茶を飲みに行き、たわいない話をしに行った私でした。覚悟と執念が飛び交っている割には、話をしてて妙に無心の心境をうかがうことができました。大会も大成功に終わり万々歳なんですが。やはり無理が体を蝕み、8月22日夜 LA PAZ 病院でお亡くなりになりました。池坊のお花の普及に情熱を燃やし続けた一生でした。お別れのお顔は、大変健やかなお顔でした。燃やし続けた矢野先生の一生は、私たちの奥底に刻み込まれました。ご冥福をお祈りすると同時にやり残したこともあるでしょうが、こんだけやったんだから少し休んでくださいが私の真実の言葉です。外国での文化の普及は彼女のように命を張った仕事です。中途はんぱな考えなら金だけおいてさっさと日本に帰んな、そう君のことだよ。
2014年8月28日 at 5:10 PM
矢野先生のご冥福をお祈り致します。
木下誠
2014年8月29日 at 2:04 PM
矢野さんは誠先生のように正道を歩まれた人で、指圧道を黙々と歩んでいらっしゃる先生には理解できると思われます。お互いに体だけは、気おつけましょう。