治療所のそばに、帝(みかど)という日本レストランがあります。スペインで初めての日本レストランで、一頃は、商社員や大使館の人達でいつも一杯のレストランでした。ここで働いていた板前さんが、独立して、それぞれのレストランを持ち、それなりに顧客ができてといった流れで、日本食が広まったのが、スペインマドリッドの日本食ブームの出発点でした。
娘と久しぶりに帝に行ったら、張り紙が貼ってありました。57年間の間、レストランを営業していましたが、今年の6月をもって閉店するという事でした。このレストランは、日本の商社員や証券会社が勢いがいい時に開店して、日本のニュースにも登場した勝ち組の象徴の商いをやっていました。イケイケの時代の象徴であり、お金儲けて、帝で寿司を食いたいぐらいのあこがれを持ったレストランでした。そのレストランが、終わろうとは、そのころを駆け抜けた私たちにとっては、若干の寂しさが伴う出来事でした。オーナーも最近お亡くなりになり、娘さんが商いを仕切っていました。それなりにお客も入っていたし、日本食ブームという事もあり、なぜなぜと野次馬根性が、うずくのですが、なんとなく一時代を駆け抜けてきた私には、ただただお疲れ様でしたの一言なのでした。娘はしきりに、何で辞めるか聞かないのと何度も私に言うのですが、その辺がスペインで育った娘は、スペイン人の如く入り込んでくるのですが、私はただただ、疲れちゃったんだよと答えるだけなのでした。引き際の難しさを今考えている私には他人ごとではない心境なのでした。
ここでの商売は、人情浪花節は通用しません。儲けがなければ、さっと撤退です。そこが、日本人の商売とは異なるようです。儲けがなくても地域の為とか、お客様の笑顔が見たい,こんなことは、ここでは考えません。何しろ撤退が速いのなんの、もうからない商売はやらないのがモットーです。それ上に、スペイン人は、お客がいるのに閉店の不思議を感じているのかもしれません。そこに日本人特有の美学があるのですが、どうなんでしょうか。
ただ今の日本、youtubeで、報道する政治家やそこにこびりつく、そうです。そうです。悪徳お代官様にしがみつく悪徳商人(竹中平蔵)の構図、まるで仕置き人が出てきそうな日本には驚かされます。
話を元に戻して、海外雄飛という言葉に浮かれた世代が年を取り、アメリカンドリュームを信じて海外に渡った漢も手足が、自由に動かなくなり、次代を担う若者も携帯電話の依存症になり、わざわざ海外に出なくとも日本でいいじゃん派が大多数で、ボウイズビーアンビシャスが死語になりました。
最近では、すしの銀座が、中華の花友が、レストラン日本が、そして大吉、皆70年代、80年代に日本人が創業した商いがスペインで消え去りました。時代の流れ、頑張り世代の終焉です。ピレネーを越えるとアフリカのスペインに憧れてきた輩が年を取り、引退。スペインの何かに憧れて住み続ける意味が薄れてきました。スペインがヨーロッパ化して、魅力のなくなった今、老兵は死なず、ただ立ち去るのみの実践に到達。
一時代の終焉
2025年4月12日 | 0 comments